第33回 『ビーベリー』 愛知県豊橋市の結婚相談所

2020年10月30日




豊橋駅前のカフェスペースにてインタビューしました。下野さんはご自宅から歩いて来たそうです。


親しみやすく自然なプロフィールの作成は大得意


<自身の婚活について思い返しますと、婚活では頭のキレる知的な人と出会いたいと願っていました。結局、ちょっと違う感じの人と結婚しましたが、幸運にも収まるべきところに収まったと自分では思います。60人以上会ってこれですから、ゆっくり自己流でやっていたら何年かかったかわかりません。本当にお見合いという仕組みがあったことに感謝しています。(中略)

自分の強み/しっかりやりたいところは、考えてみると「アプリ、パーティー、元カレなど他の活動のことでも、ご相談をお受けする」ことだと思います。今は誰かに相談したいのにできなくて困っている人が本当に多いです。家族関係の悩みは婚活には影響が大きい話です。会社での人間関係のご相談を聞くこともあります。現在の少人数ならでは、ですね。>

 愛知県東三河地方の中核都市である豊橋市で結婚相談所ビーベリーを営む下野祥代さんからのメール文の一部だ。ちなみに僕はまったく手を加えていない。下野さんの誠実な人柄と高い文章力が伝わって来るような文面だと思う。

「会員さんのプロフィールを自然で親しみやすい形で書いて差し上げることには自信があります。私が婚活していた時も、バリバリ感に溢れたすご過ぎるプロフィールを見せられるのは苦手だったからです。もちろん、コピペなどは論外です」

 上記のメール文にもあるように、下野さんは会員がマッチングアプリを利用する際もプロフィール文のアドバイスをしてあげている。実際、会員がアプリで相手を見つけて退会したこともある。

 それでは成婚料を受け取ることができないが、「快く送り出しています」と下野さん。いい人だな、と思うけれど経営がちょっと心配になる。そこまでサービスするならばお見合い料や月会費を高めにして、成婚料は思い切ってゼロ円にするなどの改革が必要かもしれない。


婚活業界の「地味な部分」を請け負っていきたい


 余計なことまで書いているのは、僕も下野さんと同じ東三河地方で暮らしているからだ。気候も土壌も交通の便も良くて製造業も発達している愛知県。大人になったら独立するという感覚に乏しく、豊かな実家暮らしのままの未婚者は少なくない。正直言って、少し野暮ったい土地柄である。

 静岡県浜松市出身の下野さんは、この地で子育てをしながら「婚活業界の地味な部分を請け負っていきたい」というユニークな意欲を燃やしている。高学歴・高収入の若い美男美女は他の結婚相談所に任せて、「普通の人が普通に幸せになる」手伝いをしたいと思っているのだ。

「私自身も30代後半で婚活を始めて、結婚相談所で出会った夫とお見合いから1年も経たずに結婚し、40歳で息子を産みました。いろいろギリギリだったので、お見合いシステムへの感謝の気持ちは強く、多くの方にお勧めしたいと思っています」

 結婚相談所では60人以上とお見合いした下野さん。当初は結婚自体に対してあまり積極的ではなかったが、結婚に真剣な男性たちとたくさん会うことで「いい加減な気持ちでは恥ずかしい」と開眼。しかし、一緒にいて居心地良いと思えそうな人とはなかなか出会えなかった。

「初めて私のほうから選んで申し込んだのが夫です。プロフィールに『2世帯住宅があります!』と自慢めいて書いてあったのは違和感がありました(笑)。でも、他の部分で嫌なところはないし、何よりも笑っている顔の写真がいいなと感じたんです」

 お見合いをしても、やはり笑顔が素敵だという印象が残った。「この人とだったら楽しく過ごせそうかな」と思い、下野さんは結婚に踏み切れたのだ。




下野さん撮影のご近所写真。週末は川沿いを散歩しているとのこと。文章だけでなく写真のセンスもある女性です。


翻訳家が夢だった。その文章力は相談所業に生かせます


 2世帯住宅はなんとか回避し、夫と息子との3人でマンション暮らしをしている下野さん。子どもが幼稚園に入ったことをきっかけに「何かしたいな」と結婚相談所を始めた。

 下野さんはいわゆる就職氷河期世代である。静岡県立大学を卒業後、いくつかの会社で働いたが「天職」に恵まれたことはなかった。自営に憧れたこともある。

「翻訳の仕事をやりたかったこともあります。でも、無理だよね、と思っているうちに時間が経ってしまいました」

 中小規模の結婚相談所の経営者を訪ね歩く本連載。インタビュー取材先のほぼ全員が自営業者だ。会社員や主婦の人が「副業」としてやっている場合もあるが、いずれにしても自営業マインドが求められる。

 自営業マインドとは、サラリーマンマインドとは対照的だと僕は思っている。自分が決めたことならば余暇を削ってでもやるけれど、誰かに仕事の内容や方法を規定されると途端にやる気を失うのだ。身勝手と言えばそれまでだが、体質的なものなので仕方ないと思う。ちなみに僕も2年弱しか「会社勤め」は続かなかった。

 自信に溢れているタイプではない下野さんだが、話を聞いてメールをやりとりしていると自営業向きなのは明らかだ。あとは特徴を出せばいいだけだ。「婚活業界の地味な部分を請け負っていきたい」という方向性に、メールやSNSなどでの文章術を加えたらどうだろうか。

 地方には良くも悪くも朴訥な独身者が多い。東三河地方も例外ではない。下野さんは、対面でのやり取りが得意でない独身者の気持ちと人柄をくみとって言葉にする「翻訳家」になればいいのだ。(取材日:2020年10月28日)




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