第4回 結婚相談所に入る大きな理由は「子どもがほしいから」。その前に知っておいてもらいたいことは?

2020年06月15日




婚活と妊活の専門家である中野さん。全国から問い合わせがあるという頼れるお姉さんだ


 筆者(大宮)は結婚をテーマにした取材活動を長く続けている。婚活や結婚の当事者だけでなく、様々な有識者にインタビューすることもあるが、結婚相談所のカウンセラーほど婚活や結婚生活に関する現実的な知見を持っている人はいない。会員の一人ひとりと信頼関係を築き、責任を持って婚活をサポートし、成婚した人との温かい人間関係が続いているケースも少なくないからだ。だからこそ、その話はやたらに面白くて役に立つ。

 本シリーズでは、婚活をしている人になり代わって筆者が結婚相談所のカウンセラーを直撃して本音で語り合う。普通はちょっと聞きにくいことまで聞いてしまうつもりだ。第4回のテーマは「結婚と妊娠」。

ぜひとも子どもがほしい場合は、1日も早く結婚したいものだ。「それほど好きになれない相手と結婚するぐらいならば独身のままでいい。でも、子どもは産み育てたい」という本音を漏らす女性もいる。

 この微妙な質問にはこれ以上いないほど適任な回答者がいる。都内で結婚相談所「こうのとり結婚&妊活塾」を運営する中野りい子さん。約10年間の婚活の末に30代後半で結婚を果たし、「すごい額」のお金と時間と労力を費やして不妊治療に励み、44歳で初産を果たした女性である。


子作りは一人じゃできないけれど、育児は一人でも可能です


――いわゆる「未婚の母」になっても構わないので子どもがほしいという方がいたら中野さんはどう答えますか。


 アラフォーの独身女性からはときどき聞く話です。妊娠しにくくなっている年齢ですが、産めるならぜひ産めばいいと私なら答えます。子作りは一人じゃできないけれど、育児は一人でも可能です。

 女性の芸能人が結婚する一般人男性はろくでもない人が多かったりしますよね。子どもを作った後に離婚するケースが少なくありません。でも、その女性は子どもを作ったことを後悔していないはず。自分の子どもというのはそれぐらいかわいいからです。

 行政の制度をちゃんと活用すれば、4~5万円の児童扶養手当などひとり親はいろいろ支援してもらえます。自分の親が元気な場合は手伝ってもらえるでしょう。

 それでも不安だし世間体も気になるという人には「未婚の母」はやめておいたほうがいいと思います。お金や世間体程度のことで怖がっていたら、一人で子育てなんてできるわけありません。


――結婚相手が見つかるまで卵子を凍結保存しておくことが話題になりましたね。


 抗がん剤治療を受ける予定がある人だったりしたら私もお勧めします。でも、それ以外の健康な人だったら、「そんなことをしていないで1日でも早く相手を見つけよう」と言いますね。

 卵子を凍結するには時間もお金もかかります。しかも保存してもらうのにも年間で何十万円もの費用が必要です。そして、卵子凍結の一番のデメリットは、「いつでも子どもができる」と安心して結婚相手を本気で見つけなくなってしまうこと。ある病院では、凍結してある卵子で子どもができた例が今までに一度もないそうです。


不妊治療には200万円は必要。最初から体外受精をするのがお勧めです


――では、どうしても結婚して子どもがほしい人にはどうアドバイスしますか。


 婚活と同時に、不妊治療用のお金を用意しておくことです。結婚相手が見つかったら、自分がお金を出すことを条件に不妊治療に協力してもらう約束を取り付けましょう。多くの男性は優しいので奥さんの望みはかなえてあげようとしてくれます。ただし、自分の望みなのだから、お金は自分が出すべきでしょう。

 不妊治療を数回、躊躇なく受ける費用の目安として200万円くらいは必要だと思います。500万円ぐらいかける人はザラにいますから。それでも子どもができないことも少なくありません。1000万円かけても無駄になってしまうかもしれない。ギャンブルに近い世界です。私の場合は、6回も病院を変えてやっと妊娠・出産することができました。

 体外受精は確かに高額ですが、タイミングや人工授精よりは確率も上がります。タイミングや人工授精とは違い、文字通り卵子を体外に出すので卵子の状態もわかるのです。不妊治療のステップとしては、タイミング法から人工授精、体外受精へと上がっていくのが一般的です。でも、特にアラフォーの場合は、早めに体外受精をやり、それでも難しかったら転院を考えるのが合理的だと私は思います。妊娠できない理由を年齢のせいにされてしまうことが多いからです。


――結婚相談所や婚活アプリなどを使った婚活をする場合はどんなことに留意したらいいですか。


 そもそも論ですが、子どもがほしいという男性は35歳未満の女性を結婚相手として探す傾向があります。彼らは検索条件に年齢を入れてしまうので、アラフォーの女性は選ばれにくいのです。

 アラフォー以降の女性が婚活をするときは、子どもがほしいという気持ちは胸の内に秘めておき、自己PR欄などに「子どもが好きです」などと書かないことを私はお勧めします。書いてしまうと、「子どもはいてもいなくてもどちらでもいい」という男性を逃してしまうからです。

 最初はやはり「一緒にいて居心地のいい人」などの相性重視で相手を探すこと。そして、信頼関係を深めた後に子どものことを切り出しましょう。私の場合は、夫からプロポーズを受けた2日後に自分のお金で不妊治療を受けたいことを切り出しました。




 以上が中野さんへのインタビュー内容だ。一人で子育てをする価値があるほど自分の子どもはかわいいと彼女は言い切る。ただし、結婚生活の中での子育てを目指すのであれば、相手との相性の良さと価値観の一致は必須だ。以前にインタビューした際、中野さんはこんな感想を述べていた。

「すごい額のお金を使って途中で病気にもなった不妊治療よりも、約10年の婚活のほうがはるかに辛かったです。不妊治療は一緒にがんばってくれる主人がいますが、婚活は一人でやらなくてはいけません」

 まずは愛するパートナーを大事にしたい。それができないのであれば、一人で子どもを産み育てる覚悟と努力が必要。中野さんの意見はどこまでもわかりやすい。


中野さんからの追伸:


 40歳近くなってからは、「不妊治療を頑張っても妊娠できない確率のほうが高い」ことをちゃんと知っておくべきだと思います。最も高度な不妊治療である体外受精をする場合でも、2、3回で妊娠できたらすごく幸運です。それでも100万円以上の費用がかかります。

 この話をするとたいていの方は「そんなに高くて、妊娠確率は低いの」と驚きます。だからこそ、婚活と妊活の前に伝えておかないと不親切だな、と思うのです。

 不妊治療をやめて子どもがいない人生を歩んでいる夫婦も少なくありません。「仲良くやっている方々が多いな」という印象です。例えば、東京の一等地にある2人暮らし用のマンションに住んでいたり。子どもがいないからこそできる生活もあるのだと思います。

 また、不妊治療の末に子どもが産まれても、「2人目が欲しかった」などの気持ちは残ります。いま、うちの息子は1歳2カ月ですが、私が45歳で夫は44歳です。夫が定年を迎える頃に、息子がちょうど大学を卒業する年齢になります。2人目はあきらめていますが、「息子が私の年齢になったときに一人ぼっちにさせちゃう」と考えると悲しいです。

 だから息子には早く結婚して家庭を作ることを勧めるつもりです。歯磨きを嫌がったりすると、「汚いと結婚できないよ。寂しいおじさんになっちゃうよ~」と脅しています(笑)。




大宮からの追伸:


 「息子が私の年齢になったときに一人ぼっちにさせちゃう」と悲しくなるという中野さんのお話を聞いたとき、親とは「有難い」ものだなと改めて感じました。ここまで先のことまで考えて常に無条件で心配してくれるなんて、他の人間関係ではほとんどありえないからです。

 愛されるより愛するほうが幸せ、というセリフを昔のアメリカ映画で耳にした記憶があります。子どもを産み育てるということは、自分のステータスや老後のためではなく、無償の愛を注ぐ対象を得るためなのかもしれません。次の世代に有意義な何かを残せた、という思いは人生の幸福に直結しているのでしょう。

 そうであれば、結婚できなくても、自分の子どもを持てなくても、誰かを愛情深く育てる経験をすれば人は幸せになれるのではないでしょうか。対象は、会社の後輩でも、近所の子どもでもいいのです。いろんな大人たちと協力して、若い世代に少しでも良い影響を与えられるようになりたいと思いました。








※この記事はヤフーニュース個人に掲載した「結婚相手はともかく子どもがほしい。婚活の前に妊活すべき?~結婚相談所の現実(5)~」を加筆・修正したものです。